令和6年度共通テスト国語 雑感(古典)

大問3 「車中雪」(『草縁集』)

 江戸時代の擬古物語?段落ごとの場面転換が比較的わかりやすく、登場人物も明快なので、部分が読めなくても全体で爆死することは少なそうな本文。

 新傾向型の問題が目を引くが、前半の問題に本文の精読が要求されている印象を受けた。和歌は出題にもあるものの、江戸時代らしく情趣の乏しいもの。

 語りの視点が分かりづらく、主人公に敬語を使っておきながら、その視点に同一化することも多々あり、物語調なのか随筆調なのかが今一つ掴みづらいかも。

問1:いずれも重要古語としてよく知られるもの。なのになぜか(ア)「あからさまにも」を間違えました。何故?評論2問とここ1問間違えた。失点は以上です。

(イ)「とみに」、(ウ)「かたち」「をかし」ですぐ決まるので、受験生に優しい問題。


問2:ここ2年よりは少し難しいか。文法の正確な理解と読解力とを問う。a「興じたりし」が副助詞な訳がない。cはようやく出てきた、知識は○だけど読解×という選択肢。主語が「山も河原も」だからさすがにね。

d「させ」は二重尊敬で良いし、そもそも心中詠?e「(大夫が持ってきたやつ)を見給ふ」が大夫への経緯なわけがない。bは「む」が文中の連体形と分かれば簡単。③④が紛らわしいか。


問3:和歌の問題と思わせて、ただの状況理解。②「恋情を訴えた」!大胆ですね。①の「私への『恨み』が積もっている」は捨てがたいが、直前の「いつも後らかし給はぬを」の「を」が逆接で、和歌の内容は謝罪とか行きたかった…みたいな内容が来ると予想して読むべきか。もしくは、サイコ主人公という可能性はゼロではないが「ほほ笑み給ひて」で「恨み」の内容を真剣なものと読む必要はない、と気づくか。そのどちらかかな。

問4:『源氏物語』を知らなくても公平になるよう心がけつつ、すべての王朝風物語がいかに『源氏』の劣悪なパロディなのか、ということを分からせてくれる問題。「月桂冠」とか「月桂樹」を受験生は知っているものだろうか。(大人は知っている、月桂冠を)

(ⅰ)①の「小倉や梅津」、③の「ひどく降る白い雪」はさすがに切れるので、②と④の二択。「月」が説明に含まれていないのが少し気にかかるものの、本文中には「昼のように」とは書いていないかな…と・・・

今これを書いていて気付いたが、「世に似ざりけり」か「夜に似ざりけり」を選ばせているのか!そういうことですね。もちろん「世」。語源に拠りすぎていて、訳なら「まったく」と訳したいところですが。

(ⅱ)漢詩の形式の次に簡単では。行数まで指定してくれているのに、「なごりなく晴れわたりて」とある時点で、①の「わずかな隙間」②の「少しずつ薄らぎ…打ち消して明るく」はすぐに消える。で④は星の話で大ずれ。ダメ押しに「いとど」を含む②しかありえない。

(ⅲ)問い方が少しややこしいが、解説文の最後の段落にあるように「院の預かりや人々と対比的に主人公を描く」がヒントになる。要は、最後の部分を読んで正しいものを選べということ。

いずれも主語の取り違えを中心に、よくある内容合致問題で、実は簡単。選択肢の最後の「風雅な心」が、まあ光源氏ということで。



大問四 杜牧「華清宮」と付随資料

 漢詩とそれについての注釈を四つ読ませるという造りは、史上初めての試み。とはいえ詩は絶句で、資料もすべて2~3行のメモのようなもの。漢詩自体を自力で解釈できないが、出題の意図にきちんと付き合い、資料を読み比べることで解釈が成立するという綺麗な作り。

 この絶句は連作なのですね。(→参考URLhttps://blog.goo.ne.jp/tiandaoxy/e/1b92d2349bbed71ce1453136d6efbf21

 自分の学年では去年の2学期末に「長恨歌」を全部読む(!)という遊びをしてみたが、結果としてこういう形で多少は生きた?玄宗と楊貴妃のイメージは、『源氏物語』冒頭をやっているはずの受験生なら常識か。

 難解な句法なども少なく、読み仮名も注も丁寧すぎるくらいなので、落ち着いてやれば本文理解は難しくなかったはず。


問1:一番簡単。間違えた人は大学受験を考え直すべき。勉強を舐めすぎ。(直前講習でもう一回やっといてよかった~さすがにみんなできたよね~…)

問2:超簡単。ア「百姓」は選択肢に「農家」をはじめは入れてたのに外したんだろうな~と想像される並び。イは現代語。膾(ナマス)と羹(アツモノ)の雑談はできる国語教員でいましょう。キワードは「ユッケ」と「ようかん」。

ウも「原因」って熟語は皆知っているわけで、問う意味が薄い。もう少し、勉強したかしていないかで差がつく問題が出てほしかった。聞けそうなのはⅢ「幸」「嘗」「然」、Ⅳ「会」かな。出典元を尖ったものにすると、受験生が知っているものがなさすぎて、注ばっかりになるのでしょうね…。じゃあ読み方形式でいいような。


問3:3秒。「有所不顧」がすべて返読文字で、それだけで答えは一つになる。玄宗の人物像もよくわかるところ。


問4:ここからようやくきちんとした問題。Ⅱの「悦」をわざわざ「シム」で訓読しているので①⑤はすぐ切れる。絶句の四句に「来」とあるのだから、この馬はライチを持ってきた、と読むのは当然、②「産地へと走りゆく」が消滅。

③は違いすぎるし、楊貴妃が意地悪過ぎ。普通に④一択で、読解をきちんとやれば自信を持って正解できる問題。


問5:Ⅲをきちんと読むと、「十月から春まで滞在しているのに、ライチの旬は夏なんだからオカシイ」と読めるので、①②は「一致」ですぐ切る。④は「賞味した場所」が×。

③は共通テストっぽくていいですね。資料の読解は合ってそうだけど、ⅣはⅢの見解を補足できないからね。(※厳密には資料の読解もちょっと違う)よって「反論」と読めばよい。これもそんなに難しくない。

各予備校の言う通り、過去2年よりはやや難化かもしれないが、問5までは12~13分ペースでいけるのでは?

問6:選択肢の要素が多く、必要な作業が分かりにくいのでやや難。(1)詩の視点(2)詩の解釈(3)資料の読解(4)詩の作者の意図、とてんこ盛り。

③は「写実的」「歴史的知識を提供」は違うにおいが凄すぎる。④「希少性」「玄宗がこの世の全てを手に入れたことへの感嘆(ワンピース?)」⑤「永遠の愛を賛美」の方向性は、資料に一切ないものなのでそこでも外せる。

①か②かで悩んで、①の「事実無根の逸話」はさすがに言い過ぎなうえ、詩の読解も適切な②が正解、と。あまり厳密に選択肢を読むよりは、時間進行を優先して雰囲気で選んでも○が付くという意味で、やはり平年並み。


オマケ 各予備校の分析と自分の感想

大問1 駿ベネ:やや易 東進:易  自分:易化

大問2 駿ベネ:やや易 東進:やや難  自分:平年並み

大問3 駿ベネ:やや難 東進:平年   自分:共通テストとしては易化(センター試験並み)

大問4 駿ベネ:やや難 東進:やや易   自分:共通テストとしてはやや難化(センター試験並み)

全体  駿ベネ:全体平年並み 東進:やや易化 河合:やや易化 代ゼミ:全体やや易化 自分:易化


資料が多いので、その分時間管理や思考の負荷が大きいが、それでも従来のセンターの標準レベル、むしろ悪問奇問のほぼ無い、悪く言うと噛み応えのない年だったのでは。

例年以上に、時間配分やメンタル管理が重要な試験であったと思われる。


特に理系の生徒にとっては、漢文は自信もってやれて古文がキツくなくて、現代文に時間を残せれば高い得点が見込めるという点で、意義を果たせた試験になりそう。

思考形式や理不尽問題が増えてから、「共通テスト」は全般の傾向として偏差が縮まっている(勉強していないバカも思考すれば解ける問題と、勉強してきた子でもとれない問題とが増えたから)が、今年の国語はきれいな偏差になるのではないだろうか。

評論の最後の問題には多少感じるところはあるが、全体の方向性としてはそこまで違和感はなく、綺麗な作りであった。


一言で表すなら……「凪」。来年からの嵐の予感、である。

(キマッタ!!!)

まあ予想はしていたことだが、教え子たちは国語で持っている学年になってしまったので、

正直かなり残念。

もっと理不尽問題、平均20点下がるような問題がほしかった。

定期考査のたびに古典にも資料比較を入れ続けてきたことが、平均上乗せ10点をくれますように。

あと、英語うまくいっていますように。

0コメント

  • 1000 / 1000